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蔵の解体と創造 of Organic Crossing

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OC Workshop ワークショップリポート

at 「わろうだ」

先人の技を知る・学ぶ「蔵の解体と創造」

2020-06-06

突然「蔵の崩壊」。

いきなりですが、トンデモない事態が起きてしまいました。
遡ること数日前、土曜日の夜9時前のこと。

ヨメは企画段階から幹事として関わってきた
ほのほ助産院の大きなイベントを明日に控え、準備に大忙し。
僕は「さあ、そろそろ寝る準備をしようか・・」と思っているところでした。

ドドドドドオオオオオンンン!!!

バラバラバラ・・・

と、外から地すべりのような、雪崩のような突然の鈍い音。
僕とヨメは顔を見合わせながら一瞬の沈黙・・・

「な、な、な、なに?なに?なんの音??」
「ああ・・外から聞こえたみたいやけど・・・・、まさか・・・?」
「・・・・・・・・く、蔵やっ!!!!」

わろうだには裏庭に蔵が二つあります。
思い当たる節があって裏庭に飛び出てみると
あたり一面ものすごい土煙で前が見えません!

「間違いないっ、蔵やっ!蔵が崩れたんや!!ライト!ライトおおお!!」

焦る気持ちを抑えながら、現場用のライトをつけて状況を確認しに走ります。
が、土煙の中からギギギ・・・バキバキ、パラパラパラ・・・と
まだ崩れている音が聞こえ、蔵に近づくことができません。
僕は大急ぎで裏の道路にまわりました。

そして見たものは・・・

暗闇に浮かび上がる蔵の無残な姿・・・。
西に面した壁が柱や腰板ごと見事になくなっていました。

「あかん・・・こりゃ、倒れるかも・・・」

母屋の方が崩れなくてよかったと思ったものの、
想像を超えたあまりの状況にどう対応していいのか分かりません。
とにかくこの家を紹介してくれた材木屋のT山さんに
電話をいれて状況を説明しました。

「いまからそっち行ったるから待ってろ!!」

僕の声からただ事でないと判断して
T山さんがすぐに駆けつけてくれました。
そして現場をみて一言・・・

「応急処置でもしてやろうと思ってきたけど、
 これは・・・・どうにもならんぞ・・・」

T山さんも初めて見たという崩れ方に途方にくれた様子。

とにかく夜の間に倒れた際に備えて面する道を通行止めにし、
電話線や電気のコードなどだけはずして
明るくなるのを待つことになりました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
万が一母屋の方に倒れてきた場合のことを考え
蔵から一番遠い部屋に非難して二時間ほどの仮眠をとり、
目が覚めるとすぐに蔵の状況を確認しに走ります。

「よかった!崩れてない!でも・・・これは・・・」







明るいところで改めて見ると、さらに壮絶な風景。
もし昼間に崩れて子どもやヨメが下を歩いていたらと考えると
背筋が寒くなるのを感じました。

朝からT山さんと、一番近所の辻井工務店の親方が
来てくれて現場検証が始まりました。

通常、蔵の崩壊といえば柱や腰板を残して
壁だけが崩れることが多いそうです。
柱さえ残っていれば修復もできます。
解体するにしても、屋根に登ることができるのでまず屋根瓦をおろし、
壁から順番に取り除いていくことで安全に解体できるのだそうです。

しかし現場をみた親方曰く、

「これは一番やっかいなタイプやな~。
 柱がないやろ?危なくて屋根に登られへんから瓦がおろされへん。
 屋根の重みでねじりながら倒れてくるんや。
 ワシもずっとやってるけど、こんなん初めてみたわ。」

崩れた原因は雨漏りによる柱の腐り。
屋根は新しく補修してあったのですが、
補修より前にすでに柱が完全に腐っていて
壁だけで支えていたような状況だったそうです。
蔵は壁が厚く、柱がその中に埋まっているので
外から見るだけでは状況を判断できないのだそうです。

結局、修復は不可能。さらにいつ倒れてもおかしくない状況。
というわけですぐさま解体に取り掛かります。

ユンボが登場しバキバキ、ガラガラとどんどん壊していきます。
しかし、腐っても蔵!!すぐにでも倒れそうな見た目なのに
ちょっとやそっとでは崩れてくれません。
苦労していろんな方向から崩していき、
最後には天井付近にワイヤーをかけ引っ張って倒します。

ドドドドオオオオオオンンン!!!



心配して見に来てくれた近所の人が見守る中、
昨日に引き続き轟音と土煙をあげて倒れていく蔵。

途中一部の壁が母屋の方に倒れそうになりましたが、そこはプロ!!
無事に蔵だけを壊すことができました。

そして残った瓦礫の山。

あとは自分たちでやらなければなりません。





最初はすこし途方にくれましたが、
気を持ち直して見直してみると、蔵が崩れたことで、
裏庭のスペース感やロケーションが抜群に向上し、
僕たちの理想に近い状況になっていることに気がつきました。

インドでは創造と破壊の神は同じだといいます。

今回の想像を絶する劇的な変化が、
さらに前へ進むためのキッカケになりそうです。

まずは2トントラック6台分という膨大な壁土と、
数百枚はある瓦を利用してパン窯や竈(かまど)を作る予定です。
興味のある方は一緒に作りましょう!!
なんなら瓦礫の山の片づけからご参加ください(笑)

「わろうだ」の実現が、また一歩近づきました。

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at 「わろうだ」

先人の技を知る・学ぶ「蔵の解体と創造」

2020-06-06

5月6日「蔵の解体」はじまる。

107.JPG

ついにはじまった蔵の解体。最初に言うのもなんだけど、実は僕はこの蔵がとても気にっていた。土がむき出しなにっているので、色合いもやわらかく、全体のフォルムもちょこんとした印象で好きだった。壁に開いた丸い窓は特にお気に入り。なんとか保存できないものかといろいろ聞いて回った。

しかしどれも費用がかかったり、いまいち具体性にかけたりして実現できなかった。また一つ目の蔵が自然崩壊したこともあり、家族の安全のことを考えると「崩す」という方向しかなかった。

しかし転んでもタダでは起きない!蔵から出た材木や土を利用して、新たな小屋を建てようじゃないか!そう心の中で何度もつぶやきながら、少し寂しさも残しつつ、新たな創造に向かって蔵の解体作業は始まった。

「蔵崩し日和」

110.JPG今日は青空が広がる良い天気。山には春の新芽がいっせい芽吹き、微妙に濃淡のある淡い緑に包まれている。

「絶好の蔵崩し日和」なんて表現は聞いたことないが、今日はまさにその日。今回の蔵の解体には、僕が通った大工の教室「自作堂」の師匠であるJさんも駆けつけてくれた。

まずはJさんが軽快にはしごを駆け上がる。

「ほ~、こりゃすごいね」


118.JPG大工さんでも蔵の解体という仕事はなかなかないらしく、興味津々の様子。僕らも後から上ってみると屋根の上はこんな感じになっていた。両手の指を交差させながら組んだような「合掌」という形になっている。

その下は大量の土。その下に屋根板がある。これが蔵の特徴。全体が土に覆われているということで火事の炎から家財を守ってきたのだろう。

115.JPGしかし瓦と土をあわせるとどんな重量になるのか想像もつかない。垂木を打ってある木の部分は土の上にのっているだけだが、構造的にずれたり、落ちたりはしないようになっている。作業としてはまず垂木を抜いて、土を下に落とすことからはじまった。

120.JPG「おーい、あがってきて~」という掛け声と同時に、下で待機していた参加者が一斉に屋根の上へ上がった。今日は奈良のオーガニックマーケットで種の交換会を主催しているメンバーと、自然食レストラン「ばんまい」のある手仕事屋で企画した「ばんまい自作堂」に参加してくれたTさんが参加してくれた。彼らは初めてあがる蔵の屋根に興味津々。Jさんから屋根の上での安全確保のレクチャーを受けながら、それぞれ仕事にかかっていった。

屋上緑化?

123.JPGまずは垂木をはずすことからスタート。ここでJさんから注意が飛ぶ。「こことここは(木が)継いであるから、この垂木とここ、あとそれは残して。」大工さんだけに構造のポイントを抑えたアドバイス。もしこのアドバイスがなかったら垂木をすべてはずしてしまって、滑落の危険もあったかもしれない。プロにきてもらってよかった。

127.JPG垂木をはずしてからは、難しいことは一切ない。
ただ、ひたすら掘る!

137.JPG道具を変えて、また掘る!

139.JPG土埃にまかれて、それでも掘る!

141.JPGくっそ~これでもか!とまだ掘る!

142.JPG下のギャラリーから「なんだか屋根耕しているみたいね~。屋上緑化しよか~(笑)」とノーテンキなコメントが飛んでもやっぱり掘る!

133.JPGそして「もういやや~」と気持ちが折れそうになったころに「ガツン」という衝撃とともに屋根板が現れる。土の厚みはなんと約20cm!土のはがれ方から3層に塗り分けられているらしいということがわかった。

左官棟梁

土が乾くまでまって、塗る、の繰り返しで蔵はできる。土はもちろん自然乾燥させるわけなので、その間作業はストップする。つまり建てるのにものすごく時間がかかる建築物なのだ。

「うちの家のそばの新築の蔵は、もう3年ぐらい作り続けているからね」

155.JPGある本で読んだ話では、家は大工さんが棟梁を勤めるが、蔵は「左官棟梁」といって、左官屋さんが棟梁を務めたのだそうだ。蔵こそは左官の花形だったのだろう。

こうやって手作業で蔵を崩していくと、丁寧にまかれた藁縄や土止めに使われている竹、壁に斜めに刻まれた土を落ちにくくするための溝、水平を調整するために打たれたクサビなど、昔の左官屋さんの息づかいが伝わってくる。

スクラップ&ビルドの考え方で次々と作られ、壊され、廃棄されていく現代の建物がある。その一方で自然素材と職人の技術のみで作られ、百年を超えて残され、崩されてもなお、素材というカタチで次世代へ受け継がれていく建物がある。

未来への遺産としてどちらが重要かと考えたなら、間違いなく後者だろうと思う。
遺産を通して先人たちとの時代を超えたコミュニケーションができる。
蔵を崩し終えたとき、どんな話ができているのか、楽しみだ。

「Organic Crossing オーガニッククロッシング」は、その道の専門家の話を聞いたり、作業を手伝ったり、実際に作業に参加してみたりすることで、知り、学び、考えながら、世界を広げ、自分で自分の未来を選択していく力を養いたいと考えています。

個人の利益だけでなく、社会的な利益を考え、賛同してくれる人たちと協力・切磋琢磨しながら、自分たちの生きる今をおもしろく、豊かなものにするとともに、いまのこどもたちが生きる未来へ大切なものを伝え、残していくキッカケになればと考えています。
今後ともよろしくお願いいたします。

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at 「わろうだ」

先人の技を知る・学ぶ「蔵の解体と創造」

2020-06-06

5月7日「屋根の解体」はじまる。

005.JPG


002.JPGこれ以上ない!というぐらいの清清しい天気の中、二日目の作業が始まった。僕らにとっては蔵崩し日和なのだが、近隣の農家さんはみんな田植えの準備に忙しい。トラクターの走りまわる音が山にこだましていた。

今日の作業は屋根の解体。昨日は屋根の土を取り除く途中までしかできなかったので今日中に全部おろし、屋根板をはずすところまで行かなくてはいけない。あまりにも天気が良いので埃の飛散を防ぐためのブルーシートを屋根から垂らすことにする。


019.JPG蔵は火災が起きた際に中にある家財を守るため、屋根の上まで土で覆ってある。その土の上に合掌が組まれ瓦屋根が乗っている。合掌は固定せずに乗せてあるだけなので、土を取り除いていく過程で自然と外れることになる。

土はブルーシートと蔵の壁の間にどんどん落としていくことになるのだが、それはもうすごい土煙!!モウモウと立ち上る煙を見て息子は「雲ができた~!」と大喜び。僕は近隣の家に迷惑をかけるのではないかとハラハラ。

031.JPGでもここまできたらあとには引けない。
もうなにを言われてもやるしかない!

(実際、後日土煙に関してクレームがありました。蔵の解体前には近隣の方へのご挨拶を徹底したほうが良いと思います。)

途中屋根に乗っていた土の厚みを記録するため、ペットボトルを置いて写真をとってみた。そうするとペットボトルとほぼ同じ高さまで土が積まれていたことがわかった。すごい量、そして重さだ。下ろすだけでも大変なのに、土をあげるのはどれほどの苦労だったのだろう・・・。

プロの目線

029.JPG土が取り除かれて板が露出していくと、足がすべるようになってだんだん足場が不安定になっていく。ここで大工のJさんが足がかりを作るために横桟を打ってくれた。

解体前に相談にいった材木屋さんが「靴はどれだけソールがしっかりしていても屋根の土の上ではすべる。飴色のゴムの付いた足袋ならすべらない。」というアドバイスをくれたので、僕は足袋を履いていた。確かに土の上ではまったく滑らないのだが、屋根板に乗った土の粒子の上ではどうしてもすべってしまう。


055.JPG大工さんが打ってくれた横桟はそういう状況にとても有効で、しっかり足を踏ん張ることができる。そのおかげで後の作業を安全に進めることができた。安全確保はプロの最優先課題であることを実感した。

土を取り除くと合掌の部分はグラグラ。バールで少しこじるだけで外れる状態になっていた。ここからの作業はかなり危険を伴うため、参加者のみなさんには下で待機してもらうことにした。


060.JPG僕は家主の責任もあり大工のJさんとともに屋根に残ったのだが、怖くなかったとはとてもいえない。Jさんのように立つことはほとんどできなかった。


074.JPGJさんとともにバールを駆使して「せーの!」の声にあわせてどんどん材木を落としていく。ドドーンという轟音とともに材木が落ちていく様子はある種の爽快感もあった。けれど自分は落ちないように気をつけないといけない。この作業は今回の蔵解体の作業のなかでも一番気を使った。

合掌を落とす順番もホゾの形状や位置を確認しながら順序良くやっていかなければならない。このあたりはやはりプロのアドバイスが必要だと感じた。けれど安全確保さえ確実にすればできない作業ではない。

077.JPG途中、屋根の上でしばし休憩。竹の棒の先にかごを付けてイチゴが運ばれてきた。こういうのも結構楽しい。

以外に近い?

078.JPG土と合掌をすべて落としたら、ついに念願の屋根板をはずす作業!ギコギコこじって一枚はずすと・・・


079.JPGあれれ?以外に床が近い。
ためしに降りてみると・・・


084.JPG



屋根から頭がでてこんな状態でした。
ここからはまったく恐怖感もなく、天井板をすべてはがして本日の作業は終了。
明日はいよいよ蔵の壁を解体します。カケヤで叩くという力技!屈強な男手を頼んであります(笑)

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